音楽療法とアルツハイマー
高齢者と音楽療法というと思い出すのは、教職課程で介護実習に行った時のこと。
デイサービスに配置されていたんですが、その中で認知症ですぐに立ち上がって徘徊してしまうおばあちゃんがいました。
とっても可愛いおばあちゃんで私も大好きだったんですが、ちょっと目を離すとどこかに行こうとするので、施設の職員の人たちはきっと大変だっただろうと思います。
そんな時、音楽療法のグループの人が来てみんなで歌を歌ったり楽器を演奏したりする機会がありました。
小1時間ほど演奏や手遊びなどを行ったと思うんですが、10分と座っていられなかったおばあちゃんがその演奏の間ずっと静かに座っていたのです。
楽器をてに持つことはありませんでしたが、膝の上に置いた手でずっとリズムを刻みながら、音楽を聴いていました。
この時「音楽療法って本当に効果があるもんなんだ」と実感しました。
ウィンター先生のお話によると、認知症(主にアルツハイマー型の認知症についてを話されていました)の方に対する音楽療法は、これまで機能維持だけしかできないと思われていました。
しかし、認知症になった方でも、新しい曲を学んだりすることができるということが分かり、今後は機能を向上させるという目標が立てられるようになったそうです。
もしかしたら脳の中に認知症に影響がある部分とは別に音楽に関しての記憶体系があるかもしれないとのことでした。
とても興味深い話だと思いました。
音楽だけでなく、絵画や造形などももしかしたら、そのような記憶体系があって、それによって他の脳の機能を補完できるかもしれません。
そして終末期になると、音楽療法は認知症を患うご本人のためだけではなく、その介護者(おもにご親族)のためにも重要になっていきます。
ここまで来ると、きっと音楽療法で数値として現れる医学的な効果というものはほとんど存在しないでしょう。
でも、音楽とともに認知症の方とその介護者に寄り添うということで、死を受け入れる準備をするということがとても重要なことなのだとおっしゃっていました(先生は「霊的・宗教的課題に寄り添う」とおっしゃっていましたが、宗教観が違いすぎてうまく説明ができていないかも)
私たちはいつか死を迎えます。
それは誰にも覆すことができません。
ならばせめて私はこのような温かい音楽を近くに感じながら最期を迎えたいと思いました。